銀行面談は、当日の話し方じゃなく、その前に決まる。そろえておきたいものが、3つあります。
そろえている社長は、少ない
業績や資金の使い道などは、事前に整えていても、事業の見せ方まで、そろえている社長は多くありません。これに関連して今回は、そろえておきたい3つを、整理してみます。
先に本記事の要点からいうと。
- 銀行面談は、当日の話し方じゃなく、事前準備で決まる
- そろえるのは、事業の強み・事業の計画・商品の現物の3つ
- 実物があると、文書の説得力が、下から変わる
僕はふだん、社長の銀行融資支援のなかで、面談に同席することがあります。そのなかで、事前準備の「型」のようなものを、大切にするようになりました。
うまくそろっていると、面談の景色は、ずいぶん変わるからです。
銀行員が、こぼしていた
ある銀行面談の雑談で、担当の銀行員から、こんな話を聞いたことがあります。
別の会社の面談で、顧問税理士が事業を熱弁していた。決算内容から、事業のこだわりまで。全部、税理士が話していた、と。
明確に批判の言葉は、使いません。ただ、話しぶりから、少し困っていることが伝わりました。「税理士がやりすぎ」の空気、とでもいうべきか。
もちろん、その税理士に、悪気があるわけじゃありません。「顧問先のために」の熱意でもあります。だからこそ、無自覚のうちに、起きているのかもしれません。
ただ、 事業のプレゼンで、税理士が社長に勝てるわけがないのです 。
熱意でも、当事者感でも、細部の解像度でも、勝てない。銀行員が本当に聞きたいのは、社長本人の言葉です。税理士が話を引き取ってしまった時点で、面談の生々しさが、薄まっていってしまいます。
実は僕も、同席するようになった最初のころは、社長の話をつい引き取りたくなることが、ありました。
答えを差し込みたくなる。そのほうが、話がスムーズに進む感じがしていたからです。
でも、それをやってしまうと、社長の言葉が場から消えていきます。銀行員が受け取りたかった当事者感も、いっしょに消えていってしまうのです。
面談の主役は、社長。税理士は「通訳」
では、銀行面談の場において、税理士はなにをする人か。
僕は、「通訳」だと考えています。
社長の言葉を、銀行員が理解できる文脈に翻訳する人。原文(社長の言葉)を、上書きしない人でもあります。
原文が薄まってしまうと、通訳の意味も薄まる。翻訳者が主役になった翻訳文は、原著の空気を伝えられないのと、同じことです。
そして通訳の仕事の大半は、面談の当日ではなく、その前にあります。事前準備の段階で、翻訳できる状態にまで、材料をそろえておく。当日は、そっと横にいるくらいです。
であるならば、「事前にそろえる材料が、面談の生死をわけていく」と言ってしまってもいいのかもしれません。
そろえるのは、3つ
では、事前になにをそろえるか。
社長といっしょに、僕がそろえているのは、3つです。
- ①事業の強み(文書)
- ②事業の計画(文書)
- ③商品の現物(実物)
順に、みていきます。
①事業の強み(文書)
なぜ、この会社が選ばれているのか。競合と、なにが違うのか。その強みは、売上やリピートに、どう表れているのか。
社長のアタマのなかにある「当たり前」を、銀行員がわかる粒度で、外に出す(明文化する)作業なのですね。
ここが弱いと、面談で「事業がよく見えない」と受けとめられてしまいます。
②事業の計画(文書)
最低でも向こう1年、売上や利益の動きを、数字であきらかにします。
売上は、どの商品や顧客から、いつ、どれだけ生まれるのか。そのために、なにへ、おカネをつかうのか。もし、計画どおりにいかなかったときには、どう修正するのか。
とはいえ、ただの数字表、ではありません。「事業の展開を、数字で示すもの」というのが、僕にとっての位置づけです。
数字の根拠が、①の強みとつながっていることも、大事なところ。数字だけがひとり歩きすると、絵に描いた計画に見えてしまうかもしれません。
③商品の現物(実物)
物なら、現物。サービスなら、現場写真・パンフレット・お客さまの声(許可のあるもの)など。
実は、この3つめが、いちばん見落とされているところだと、僕は考えています。
「文書はそろえるけど、実物までは」ということになりがち。ですが、この実物があるかないかで、文書の説得力が、下から変わってきます。
実物があると、文書の説得力が変わる
以前、海外展開の資金の相談で、銀行面談の準備を、ご一緒したことがあります。
そのとき、僕は社長に、実物を持参されることを、おすすめしました。パンフレット、デジタル画像、実際の商品など、見せられるものを、と。
面談で、それらを担当の銀行員に、お見せしたときのこと、銀行担当者の温度感が、たしかに変わりました。
結果、担当者からは「(事業に)感動しました」という言葉を、いただいたのです。文書だけでは、たぶん、この温度にはならなかっただろう、とおもいます。
なぜ、そこまで響いたのか。事業や商品が「イメージ」だけではおわらなかったからです。実物があると、事業が「動いている」ことが、伝わります。加えて、実際の納品先には馴染みのある企業もあって、銀行員のアタマのなかに、事業が実際に走っている景色が、一瞬で描かれたのだと想像します。
では、いくつか、深掘りしておきましょう。
- 文書は、「言えばわかる」に寄ってしまいます。行間を読ませる負担が、銀行員側にかかります
- 実物は、言葉を要さずに伝わります。銀行員が事業の解像度を、まず一気に上げてくれるのです
- そのあとに文書を読むから、文書の情報が「実際に走っている事業」の証拠として、深まっていく
実物は、文書の「下敷き」なのですね 。
もし、実物と呼べるものがなさそうな業種、たとえばサービス業でも、大丈夫です。パンフレット・現場写真・お客さまの声(許可のあるもの)が、じゅうぶんに「実物代わり」になります。
実物ゼロで、文書だけを渡すのは。銀行員のかたに、「事業の景色を、想像で埋めてくださいね」と、宿題をお渡ししてしまっている状態、と言えるかもしれません。
面談は、その前に決まる
銀行面談は、当日の話し方じゃなく、事前準備で決まっていく。
社長が用意しておくものと、税理士が引き取らずにおくもの。その両方がそろっているのが、いい面談なのだと考えています。
まとめてみます。
- 銀行面談は、当日の話し方じゃなく、事前準備で決まる
- そろえるのは、事業の強み・事業の計画・商品の現物の3つ
- 実物は、文書の説得力を、下から支える「下敷き」
最初の1歩
つぎの面談の前に、①②の文書と、③の「実物代わり」になるものを、社長の手元に、いちど並べてみましょう。
いま、なにがそろっていて、なにが足りていないか。それが見えるだけでも、面談の景色は、変わりはじめるかもしれません。
もし、そろえかたに迷うところがあれば、よろしければ個別相談ものぞいてみてください。

