「金利が高いから、顧問先には借りないように指導することが増えた」
税理士どうしの会話で、そんな話を耳にしました。
かくいう僕も、昔はそっち側にいました。
「借りないように指導することが増えた」
きょうは、顧問先の融資の話に、どこか迷いを感じている税理士のかたに向けて書きます。
先に本記事の要点からいうと…
- 金利上昇の「借りないように」は、新しい判断ではなく、昔からある「やらなくていい理由」に追い風が吹いたものかもしれない
- 融資支援がタダの仕事のままだと、助言は手間のかからないほうに寄っていく
- だから、融資支援を仕事にする
税理士どうしの会話で、こんな話を耳にしました。
「融資金利が高いから、顧問先には借りないように指導することが増えた」
金利が上がっているのは事実です。借りれば、利息がかかる。顧問先のことをおもえば、慎重になるのも自然なことでしょう。
税理士どうしでは、わりとよく聞く 「指導」 という言い方。なんだか上からで押し付けっぽくて、僕は、あまり好きではありません。
ただ、今回引っかかったのは、言葉そのものより、その中身のほうでした。
その「借りないように」は、何から生まれた助言なのだろうか?
そう考えたとき、おもい出したのは、勤務時代のじぶんでした。
勤務時代の僕は、「やらなくていい理由」を探していた
税理士事務所に勤めていたころ、僕は融資支援について、 「やらなくていい理由」 を探していました。
よく使っていたのは、この3つです。
- 借入を増やすと、財務状態が悪くなる
- 利息も、タダではない
- まだ、借りなくてもいいのではないか
いま読み返すと、1つめは、ただの無知です。借りれば借入金は増えますが、借りた時点では、そのぶん預金も増えます。借りただけで財務が悪くなる、という話ではありません。
3つめには、基準がありませんでした。いつなら借りるべきなのか。じぶんでも答えられないまま、「まだ」と言っていたのです。
それでも、どれも、もっともらしく聞こえます。社長に向かって言っても、おかしなことを言っているようには見えません。
だから、使えてしまったのだとおもいます。
そして、このうちの1つが、いま耳にする話とそっくりなのです。
金利上昇は、新しい理由ではなかった
2つめの「利息も、タダではない」。
いまの「金利が高いから」は、これとほとんど同じ形をしています。
違うのは、音量です。金利が低かったころは、小さな声でしか言えなかった。いまは、だれに聞かれても通る大きさで言えます。
金利上昇で、新しい理由が生まれたのではありません。昔からあった「やらなくていい理由」に、ちょうどいい 「追い風」 が吹いた、ということです。
もちろん、金利を見て慎重になる税理士が、みんなそうだと言いたいわけではありません。顧問先の事情をよく見たうえで、借りないほうがいいと判断している場面もあるはずです。冒頭の会話の税理士さんがどうだったのかも、僕にはわかりません。
ただ、こうは言えるとおもいます。
「借りないように」は、税理士にとって、いちばん手間のかからない助言でもある ということです。
借りないなら、銀行とのやりとりも、資料の準備も、資金繰りの見通しを立てる手間も、生まれません。
そう書いている僕も、勤務時代は、まさにそれをやっていました。
では、なぜ僕は、その向きを変えられたのか。
立場が変わると、助言の「向き」が変わる
変わったきっかけは、独立でした。
勤務時代は、融資支援をしても、しなくても、僕の報酬は変わりませんでした。
独立してからは、融資支援を仕事として扱うようになりました。
すると、顧問先にとってどうかという「建前」と、仕事として成り立つかという「本音」を、両方とも机の上に出して考えられるようになったのです。
建前といっても、ウソではありません。どちらも、考えなければいけないことです。
勤務時代は、手間をかけたくないという「本音」が、慎重な助言という「建前」の顔をして出ていたのだとおもいます。
同じ僕です。知識が一夜で増えたわけでもありません。変わったのは、立場でした。
立場が変わらないと、わからない考え方はある。僕は、そうおもっています。
「タダの仕事」は、やらない方向に寄っていきます 。人の性格の問題ではなく、そういう向きの力がかかる、ということです。
だから、融資支援を仕事にする。
誤解のないように書いておくと、税務の仕事を軽く見ているわけではありません。むしろ逆です。決算書も、毎月の数字も見ている顧問税理士だからこそ、融資支援ができる。融資支援は、税務の延長線にある仕事だとおもっています。
では、「借りないように」の代わりに、顧問先へ何を渡せばいいのか。
「借りないように」の代わりに、渡せる一言
次に顧問先の社長から「金利も上がっているし、借りないほうがいいですよね」と聞かれたら、こう返してみてはどうでしょうか。
「借りるかどうかと、使うかどうかは、別々に決めてもいいんですよ」
運転資金であれば、借りたおカネをすぐに使わず、手元に置いておくという考え方もあります。
この一言で、社長の答えが変わるとはかぎりません。それでも、「借りない」で閉じかけた話が、もう一度ひらきます。
そして、ひらいたあとの話を聞くのは、税理士の側です。ここで、少しだけ手間が生まれる。
その手間を、タダで引き受けるのか。仕事にするのか。きょうの話の分かれ目は、たぶんそこにあります。
と、ここまで書いて、じぶんで引っかかることがあります。
外から言っている僕も、同じ
「指導」という言葉が好きではない、と書きました。
でも、こうしてブログで「その助言の向きを疑ってみませんか」と書いている僕も、外から言っています。やっていることは、あまり変わらないのかもしれません。
その自己矛盾は、認めておきます。
だからこそ、教える場ではなく、 いっしょに考える時間 をつくりたいとおもいました。
融資支援を、どう仕事にするか。報酬の形はどうするのか。顧問先に、どう切り出すのか。ここから先は、記事1本ではお話ししきれないところです。
11月に、顧問税理士のかた向けのセミナーをひらきます。定員は5名です。少人数にしたのは、それぞれの顧問先にどう当てはめるかまで、いっしょに考えたいからです。
金利が上がって「借りないように」と言いたくなる場面を、融資支援を仕事にする入口に変えたい。そうおもっている税理士のかたと、いっしょに考える時間にできたらうれしいです。
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まとめ|その助言の向きを、一度だけ確かめる
きょうは、金利が上がって増えた「借りないように」について書いてきました。
要点を、3つにまとめておきます。
- 金利上昇の「借りないように」は、新しい判断ではなく、昔からある「やらなくていい理由」に追い風が吹いたものかもしれない
- 融資支援がタダの仕事のままだと、助言は手間のかからないほうに寄っていく。人の性格ではなく、立場によってかかる力
- だから、融資支援を仕事にする。税務の延長線にある仕事として
最初の1歩
- 次に「借りないほうが」と言いそうになったら、それが顧問先の事情から出た言葉か、じぶんの手間から出た言葉か、一度だけ確かめてみる
「借りないように」と言うとき、その言葉は、どちらから出ているでしょうか。

