「いまは、借りるにも金利がどんどん上がっているし、実際に高い」
金利が上がって、社長からこういう声を聞くことが増えました。
ただ、借りたおカネを手元に置いておくなら、その3%は、そのまま3%にはなりません。
「金利が、どんどん上がっているし、実際に高い」
きょうは、金利が上がって、「いまは借りないでおこう」と考えている社長に向けて書きます。
先に本記事の要点からいうと…
- 借りたおカネを手元に置いておくなら、借入金利3%が、そのまま会社の負担3%になるわけではない
- 預金の利息と節税効果を差し引くと、黒字の会社なら2%前後。計算のしかたは変わらず、数に入れる項目が1つ増えただけ
- 決済用預金に置いている会社や、赤字の会社は、この計算が変わる。じぶんの会社の条件で確かめる
融資の相談を受けていて、最近いちばん多く聞く「借りない理由」は、金利です。
たしかに、金利は上がっています。帝国データバンクの試算では、借入の金利が0.25ポイント上がると、利息の負担は1社あたり年46万円ほど増えるそうです(2026年9月公表)。
利息が増えるのは、ほんとうです。
それに、ここ数年の「ほぼゼロ」の金利を知っていれば、3%と聞いて高いと感じるのも、当たり前の感覚だとおもいます。
ただ、金利の数字だけで「借りない」を決めるのは、計算を、いちばん手前で止めてしまうことなのかもしれません。
なお、3%という金利そのものが、融資の条件として高いか安いかは、また別の話です。ここで考えたいのは、借りたおカネを手元に置いたときの、会社にとっての実際の負担のほうです。
ひとつ、聞いてみたいことがあります。
その3%は、借りたおカネを使う前提の3%でしょうか。それとも、置いておく前提の3%でしょうか。
「だいぶイメージが変わりますね」
ある社長と、こんな話をしたことがあります(守秘義務は守りつつ)。
その日は、「借りるなら、いまがタイミング」という話をするつもりでした。
ところが、話を切り出す前から、社長は金利を気にしていました。
「いまは、借りるにも金利がどんどん上がっているし、実際に高い」
なので、話の順番を変えました。借りるタイミングの話は、あとまわし。先に、金利の話をすることにしたのです。
話したのは、2つです。
1つは、借入の利息は経費になるので、そのぶん税金が減ること。
もう1つは、借りたおカネを預金に置いておけば、いまは預金にも利息がつくこと。
どちらも、借入金利の3%から、差し引いて考えられるものです。
ひととおり聞いたあと、社長はこう言いました。
「だいぶイメージが変わりますね。それならまだ、借りてみようともおもえる」
金利は、1ミリも下がっていません。3%は、3%のままです。
変わったのは、金利ではなく、金利の「見え方」でした。
「借ります」と決めたわけでもありません。「まだ」「借りてみようとも」。閉じかけていた扉が、少しだけ開いた。それくらいの温度です。
ただ、その少しを開けたのは、説得ではなく、計算でした。
振り返ると、社長の言葉は二段になっていました。「どんどん上がっている」は金利の動きの話で、「実際に高い」はいまの水準の話。まずは、水準のほうから見ていきます。
借りて置いておくおカネは、3%もかかっていない
前提を、ひとつ置いておきます。
僕が社長に「借りられるうちに、借りておきましょう」とおすすめするのは、使うためではありません。手元資金を厚くして、置いておくためです(→ 「回っているうちは借りない」の「回る」には、中身がない)。
置いておくなら、コストはこう考えられます。
(借入金利 − 預金金利)×(1 − 税率)
預金金利を引くのは、置いてあるおカネにも利息がつくからです。税率をかけるのは、借入の利息が経費になり、そのぶん税金が減るからです。預金の利息にも税金はかかるので、税率は「差」のほうにかけます。
正直に書いておくと、金利が上がる前、僕が社長に伝えていたのは、節税効果のほうだけでした。預金の利息は、計算に入れなくていいくらい小さかった。普通預金の平均金利は、2022年から2023年ごろ、0.001〜0.002%ほどでした。
いまは、そうではありません。2026年9月の平均は、0.322%です(日本銀行。9月24日に適用された政策金利の引き上げより前の数字です)。
たとえば、借入金利3%、普通預金0.322%で計算してみます。税率は、中小企業の法人税などを合わせた実効税率です。目安として、所得の大きさで次のように変わります(地方税は、所在地などでも変わります)。
| 会社の所得(年) | 実効税率 | 手元資金を持つための実質コスト |
|---|---|---|
| 400万円以下 | 21.37% | 約2.11% |
| 400万円超〜800万円以下 | 23.17% | 約2.06% |
| 800万円超 | 33.58% | 約1.78% |
| 赤字 | ー | 約2.68% |
※実効税率は、標準税率をもとにした目安です。所得がおよそ2,400万円以下で、防衛特別法人税がかからない会社の値にしています。
黒字の会社なら、2%前後まで下がる。条件によっては、1.8%くらいまで。
ここでは、この数字を「手元資金を持つための実質コスト」と呼んでおきます。借入の金利そのものが下がるわけではありません。3%は、あくまで3%です。
なお、信用保証協会の保証料は、ここでは含めていません。保証料があるかどうか、いくらかかるかは融資ごとに違うので、実際に比べるときは、別に足して考えます。
以前、インフレを差し引いた「実質金利」の話を書いたことがあります(→ インフレ時代の新常識!金利上昇が社長の「追い風」になる逆説的メカニズム)。今回は、それとは別の、もっと手前の計算です。インフレの先行きを読まなくても、通帳と決算書の数字だけでできます。
僕は、この数字を「保険料」に近いものだと考えています。
たとえば、3,000万円を1年間、そのまま置いておくとすれば、年に60万円ほど。 「3,000万円の安心に、年60万円の保険料を払う」 。高いか安いかは、会社によって違います。ただ、3%=年90万円で比べるのとでは、判断の景色が変わってくるはずです。
では、社長のもう一段の言葉、「どんどん上がっている」のほうは、どうでしょう。
計算のしかたは、変わっていない
金利がない時代は、「利息は、税引後で考えましょう」でした。
金利のある時代は、「税引後で考える。しかも、預金の利息もある」。
計算のしかたは、変わっていません。数に入れる項目が、1つ増えただけです。
だから僕は、こう考えています。
金利が上がったいまこそ、金利を「表面」で見ない。
社長の「どんどん上がっている」にも、同じことがいえます。
貸出の金利が上がるとき、預金の金利も上がります。ただ、同じ幅ではありません。たとえばある信用金庫では、この8月、普通預金の金利を0.10ポイント上げたいっぽうで、短期プライムレート(貸出金利の目安のひとつ)は0.25ポイント上げています。
差は、広がっている。預金金利の水準は、まだ高くない。でも、上がってはいる。どちらも、ほんとうです。
「表面で見ない」は、金利を安く見積もりましょう、という意味ではありません。上がった分も、差し引ける分も、両方を数に入れて、じぶんの会社の数字で決める、ということです。
僕が社長とやっているのも、まちがいを正すことではなく、この計算を一緒に並べることです。社長が感じている負担と、実際の負担は、イコールとはかぎらない。それを、同じ紙の上で確かめる。
ただ、この計算が、そのまま当てはまらない会社もあります。
この計算が、当てはまらない会社
3つあります。
1つめは、借りたおカネを、利息のつかない預金に置いている会社です。
決済用預金といいます。利息がつかないかわりに、銀行が破綻しても、全額が保護されます。利息のつく普通預金は、元本1,000万円までと、その利息までです。
金利のない時代、決済用預金は、いわばタダの保険でした。どうせ利息はつかないのだから、全額保護のほうを選んでも、失うものはなかった。
金利のある時代になって、この保険に「保険料」がつくようになりました。 あきらめる利息のことです。たとえば、3,000万円を置いておくなら、預金金利0.3%で年9万円、0.4%なら年12万円ほど。
どちらがいい、という話ではありません。保険料がつくようになったと知ったうえで、選ぶ。
ちなみに、僕が見ている範囲でも、決済用預金にメインのおカネを置いている会社は、多くありません。
統計を見ても、その向きと食い違わないようです。日本銀行の統計では、残高の小さい法人の口座で、当座預金(これも利息のつかない預金です)の割合は数%にとどまります。ある信用金庫のディスクロージャーでも、普通預金のうち決済用は1割ほどでした(個人も含んだ数字です)。
2つめは、赤字の会社です。利息が経費になっても、減らせる税金がないので、節税効果は効きません。さきほどの例なら、約2.68%。それでも、3%よりは低くなります。
3つめは、借りたおカネを使う前提の会社です。この計算は、置いておくことが前提です。設備や仕入れに使うなら、見るべきは、その使い道でどれだけ回収できるか、のほうになります。
なお、金利や税率は、2026年9月時点の数字です。会社ごとの条件で変わるので、最新は、銀行や顧問税理士に確かめてみましょう。
まとめ|金利は、「表面」ではなく「実質」で見る
きょうは、金利が上がって「いまは借りない」と考えている社長に向けて書いてきました。
要点を、3つにまとめておきます。
- 借りたおカネを手元に置いておくなら、借入金利3%が、そのまま会社の負担3%になるわけではない
- 預金の利息と節税効果を差し引くと、黒字の会社なら2%前後。計算のしかたは変わらず、数に入れる項目が1つ増えただけ
- 決済用預金に置いている会社や、赤字の会社は、この計算が変わる。じぶんの会社の条件で確かめる
最初の1歩
通帳を1冊、開いてみてください。
メインの口座が、利息のつく普通預金か、決済用預金か。いま、何%の利息がついているか。
それがわかったら、いまの借入金利と一緒に、さきほどの式に入れてみる。税率は、表のなかで、じぶんの会社にいちばん近い行で構いません。
その3%は、社長の会社にとって、ほんとうに3%でしょうか。
3%は、借りたときのコストです。いっぽうで、借りなかったときにも、見えにくいコストがあります。借りないまま1年たつと、預金がどう減っていくか。その減り方を、社長ご自身の会社で眺めてみる回を、無料メール講座 『銀行融資ラボ』 の第1回に置いています。
よかったら、のぞいてみてください。

