「赤字だから」「業績が悪いから」
銀行への報告をうながすと、そんな言葉が返ってきます。
言い訳だとは、おもいません。だから、やっかいなのです。
何も言わず、ただ行かない
きょうは、銀行から融資を受けていて、決算が悪い年の報告に気が重くなる社長に向けて書きます。
報告に行ったほうがいいのは、わかっている。それでも足が向かないときに、どうするかの話です。
先に本記事の要点からいうと…
- 赤字の年の報告は、誰も決めないまま、消えていきやすい
- 赤字の年の報告にこそ、社長の姿勢があらわれる
- わかっていても行かなくなるから、数字を見る前に、行くと決めておく
決算が赤字だと、とたんに銀行への報告をしたがらなくなる社長は、多い。
気になるのは、そのあらわれ方です。
「今年は報告に行きません」と、誰かに言うわけではありません。相談があるわけでも、宣言があるわけでもない。
ただ、報告をしない。行かない。
報告に行くはずの時期が、何も起きないまま過ぎていく。そういう行動として、あらわれるのですね。
では、なぜ行かないのか。
本人に聞くまで、その理由は、言葉にすらなっていないことがあります。
「赤字だから」は、筋が通って見える
僕が報告をうながすと、返ってくる言葉があります。
「赤字だから」
「業績が悪いから」
悪いことが起きたとき、それを人に話したくないのは、ふつうのことです。ましてや相手は、おカネを借りている銀行。わざわざ悪い数字を見せに行くのは、気が重いでしょう。
社長の側から見れば、「赤字だから、行かない」は、筋が通って見えるのです。
ただ、悪いことほど早く伝えたほうがいいということも、たいていの社長はわかっています(と、推測します)。
わかっているけれど、できない。
だとすれば、問題はどこにあるのでしょうか。
赤字の年こそ、報告の値打ちが出る
先に、僕が「赤字だから」という社長の言葉のあとに何を話しているかを、書いておきます。
赤字だからこそ、報告に行くところに「誠実さ」があらわれる 。
業績のいい年の報告は、誰にでもできます。良い話をしに行くのですから、足取りも軽いでしょう。
いっぽうで、悪い年の報告は、そうはいきません。だからこそ、そこに社長の姿勢が出ます。
業績は悪いけれど、この社長はちゃんと報告に来る。赤字そのものの評価が変わるわけではありません。ただ、業績が悪いなりに、社長の資質という面で評価されやすくなります。その結果として、銀行との「関係」も、良くなる方向に動きやすい。
もうひとつ、途中経過の話があります。
いま何が起きていて、どうしようとしているのか。それをタイムリーに伝えておくことが、のちのち銀行に支援をお願いするときに、話をスムーズにしてくれるものです。
(途中経過を積み重ねる意味は、こちらにも書きました → 銀行が見ているのは、信用か、信頼か)
ここまでは、僕も社長にお話ししていることです。
ですが、この話には、ひとつ弱点があります。
「関係を築くため」では、足が向かない
銀行との「関係」を築くために、定期的に会いに行きましょう。
よくあるアドバイスです。僕自身も、似たことを書いてきました。
間違ってはいません。行けば、関係は良くなりやすい。さきほど書いたとおりです。
でも、この理由には、赤字の年に出番がありません。
関係が大事なことくらい、「赤字だから」と足が止まっている社長も、わかっているからです。 わかっていないから行かないのではなく、わかっていても行かない 。
そこにもう一度「関係が大事です」と言っても、たぶん、足は動かないのではないか。というのが、僕の見立てになります。
正しすぎる理由は、いちばん必要な年に、何の役にも立たないということです。
なので、僕は、行く理由を入れ替えて考えています。
定期的に会いに行くのは、関係を築くためではない。 決めておかないと、わかっていても行かなくなるから 。
関係は、目的というより、結果です。
なにをやるかは、よくあるアドバイスと同じ。ちがうのは、なぜやるかです。
そして、なぜやるかが変わると、やり方も変わってきます。
数字を見てから、決めない
変わるのは、「決めるタイミング」です。
決算が赤字だとわかってから、「さて、報告に行くかどうか」と考える。これだと、行きたくない気持ちのほうが、たぶん勝ちます。
数字を見たあとでは、「赤字だから」という、もっともな理由がもう手元にあるからです。
だから、 数字を見る前に決めておく 。
赤字の年のじぶんに、判断を任せない。
決算(申告)がおわったら、赤字でも黒字でも、かならず報告に行く。そう決めて、「予定」にしてしまう。
「来年は、赤字でも報告に行くよう意識します」
これでは、たぶん足りません。「意識します」ほど、役に立たないものはないからですよね(僕自身も、さんざん痛い目にあっています…)。
意識に頼らず、しくみや環境で動けるようにする。これは、習慣づくりの基本でもあります。融資の話でも、それは同じです。
誤解のないように書いておくと、これは「社長は悪くない」という話ではありません。
報告のタイミングを決めるのは、社長です。以前も書いたとおり、その責任は社長にあります。
責任が社長にあるからこそ、じぶんの意識をあてにせず、じぶんで予定をつけておく。そういう順番です。
例外も、つくらないほうがいいでしょう。
黒字の年にも行く。赤字の年にも行く。行くかどうかが、数字で変わらない。そうなってはじめて、数字を見てから決めずにすむのです。
もちろん、資金繰りが苦しい、返済がむずかしくなりそう、というときは、決算報告の時期を待つ話ではありません。ここでお話ししているのは、毎年の報告を欠かさないための工夫です。
報告で何を話すかは、こちらにまとめています。
まとめ|その報告は、数字を見る前に決まっているか
きょうは、銀行から融資を受けていて、決算が悪い年の報告に気が重くなる社長に向けて書いてきました。
要点を、3つにまとめておきます。
- 赤字の年の報告は、誰も決めないまま、消えていきやすい
- 赤字の年の報告にこそ、社長の姿勢があらわれる
- わかっていても行かなくなるから、数字を見る前に、行くと決めておく
最初の1歩
次の決算の申告がおわるころに、「銀行へ決算報告」と、いまカレンダーに入れてみましょう。
次の決算が赤字か黒字かは、まだわからなくていいのです。わからないうちに入れておくことに、意味があります。
行かないと決めたわけでもないのに、行かなくなる。
次の決算報告は、もう予定に入っているでしょうか。
報告と同じで、借りるかどうかも、業績が悪くなってから考えると、選べることが減っていきます。そうなる前の考え方を、無料メール講座 『銀行融資ラボ』 に置いています。
よかったら、のぞいてみてください。

