なぜ銀行は、他行のことばかり聞くのか

なぜ銀行は、他行のことばかり聞くのか

銀行との面談で、他行の話ばかり聞かれる。そんなふうに感じたことは、ないでしょうか。
実は、聞かれることは、だいたい決まっているものです。決まっているのなら、こちらにもできることがあります。

目次

「毎月、いくら返してますか?」

今回は、銀行から他行のことを聞かれたときに、社長がなにを準備しておけるかを整理してみます。

先に本記事の要点からいうと…

  • 融資の場で聞かれることは、だいたい決まっている
  • 決まっているのに、答えられる状態になっていないことが多い
  • 他行の条件は、隠すより渡したほうが、たいてい前に進む

僕はふだん、社長の融資の相談を受けるなかで、こんな質問をすることがあります。

「毎月、いくらくらい返済されていますか?」

ここで数字がすらすら出てくることは、あまり多くありません。

「だいたい何万円くらい、ですかね」

だいたい、そのくらいの答えになります。

聞いてみると、やはり借入金一覧表を作っていない。手元にあるのは、銀行から渡された返済予定表だけです。借入ごとに1枚ずつあって、毎月の合計を正確に知るには、それらをすべてつき合わせるしかない。そういう状態です。

悪気があるわけではありません。返済は毎月、口座から自動で引き落とされていきます。合計を正確に意識する場面が、そもそも少ない。

ただ、これをそのまま銀行との面談に持ち込むと、話が変わってきます。

毎月の返済額を聞かれて、「何万円くらい」としか答えられない。それだけで、大雑把な管理をしている社長だと見られても、しかたがありません。

もう一段、先もあります。銀行から「借入金の一覧をいただけますか」と言われて、「一覧は、ないので」と答える。すると「では、返済予定表のコピーを」となります。そこですぐに出せればまだしも、各銀行の返済予定表を探すのに手間取っているようなら。今度は、いい加減な管理をしている会社ということにもなってしまいます。

聞かれるとわかっていれば、防げたはずのものです。しかも、聞かれるのは、その銀行から借りているぶんのことだけでは、ありません。

では、なにを聞かれるのか。

聞かれることは、だいたい決まっている

融資の申込みや面談の場で銀行から聞かれることを、僕は以前、本のなかで5つに整理したことがあります。

  • 「なぜ当行に借入申込みをされたのですか?」
  • 「当行以外に借入はありますか? なぜそちらに申し込まないのですか?」
  • 「他行にも借入を申し込んでいますか?」
  • 「他行での借入条件はどのようですか?」
  • 「当行で借入できなかった場合にはどうされますか?」

並べてみると、気づくことがあります。

5つのうち、4つが他行の話なのです。

残る1つも、聞いているのは「なぜウチなのか」ですから、他行との比較がその裏にあります。ほとんどが、他行がらみだといってもいい。

いっぽうで、答えのほうは会社ごとにまるで違います。借入の状況も、銀行との付き合い方も、百社百様ですから。

答えは百社百様でも、問いのほうは決まっている 。準備ができるのは、そこです。

なぜ、そこまで他行のことを聞くのか

では、なぜ銀行は、そこまで他行のことを聞くのでしょうか。

銀行には、他行に対する競争意識があります。他行が貸すなら、負けずに貸す。他行が引くなら、遅れずに引く。だから、他行の様子をうかがっておきたい。

これは裏返すと、他行がどう判断しているかも、判断の材料のひとつになっているということです。

他行が貸しているなら、なぜ貸せているのかが気になる。他行が慎重なら、なぜ慎重なのかを確かめたくなる。そういう見方でもあります。

もちろん、それがすべてではありません。自行で調べて、自行で決める部分のほうがずっと大きい。ただ、材料のひとつとして、他行の目が入っている。おカネを貸してリスクを取る以上、材料は多いほうが自然なのだろうと想像すべきでしょう。

社長の側から見ると、こういうことになります。

じぶんの会社は、その銀行の目だけでなく、他行の目でも見られている

だとすれば、渡し方も変わってきます。

ところが、ここで止まってしまうことが、けっこうあるのです。

「金利は、言いたくないんです」

他行の借入条件を聞かれたとき。とくに金利について、教えたくない、という話は割とよくあります。

その気持ちは、わかります。

条件の良し悪しは、そのまま会社の評価に見えてしまうところがあるからです。低い金利で借りられている会社と、そうではない会社。並べられたくない、とおもうのは自然なことでしょう。

僕がそういうときにお伝えしているのは、こういうことです。

後ろめたいことがないのであれば、隠す必要のない情報ですよ、と。

とはいえ、これだけだと少し足りません。なぜ、隠さなくていいのか。理由は、もう一段うしろにあります。

隠す意味は、あまりない

金利を見せたくないというのは、たいてい、いまの借入金利が高いという認識があるからです。

では、なぜ金利が高いのか。

典型的な理由のひとつは、業績です。

もちろん、金利は業績だけで決まるものではありません。融資の期間や、担保・保証の有無、借入をした時期。ほかの条件によっても、金利は変わってきます。

それでも、会社の評価にかかわる部分は、決算書を見れば、銀行にもある程度わかります。決算書は、融資の審査に必ず出ていくもの。つまり、金利が高い理由のほうは、そもそも隠しようがありません。

だとすれば、いまの金利を隠したところで、新しい借入の条件だけが良くなる、ということにもなりにくいことがわかります。

隠したところで、条件が良くなるわけではないのです

いっぽうで、開示したときに起きることもあります。

まず、見え方が変わります。他行の条件を包み隠さず出す会社は、誠実に見えます。情報の透明度が高い会社、と言い換えてもいい。借入の全体を整理して説明できる会社だ、とも受け取ってもらえます。銀行から見たときに、これは小さくないとおもいます。

もっと直接きいてくるのが、比較です。条件を開示するからこそ、銀行は明確な比較対象として、条件を検討しやすくなります。競争原理が働きやすくなる、ということでもあります。

ちなみに、開示したことだけをもって条件が動いた、とまで言い切れるものではありません。融資の条件は、いろいろなものが絡み合って決まっていきます。ただ、比較できる材料が銀行の手元にあるかないかで、検討の入口は変わってくる。そこは、たしかに感じているところです。

隠して守れるものは、そう多くない。渡したほうが、たいてい前に進みます。

問いが決まっているなら、そろえておける

では、社長の側でやっておくことは、なにか。

借入の状況を、1枚にまとめておくことです。

いわゆる、借入金一覧表になります。

借入先、当初の借入額、いまの残高、毎月の返済額、金利、完済の時期など。これらを借入ごとに1行ずつ並べて、1枚にまとめる。それだけのものです。

返済予定表を並べないと合計がわからない状態と、この1枚がある状態。銀行から見たときの景色は、ずいぶん変わってきます。

そして、この1枚があれば、聞かれたときに困りません。「毎月、いくら返してますか」にも、「他行の条件は」にも、その場で答えられる。問いが決まっているのなら、答えのほうを持っておけばいい

とはいえ、この表は、銀行のために作るものではありません。

毎月いくら返していて、この先いつまで返し続けるのか。それがわかっていないと、資金繰りの見通しは立てられません。まずは、社長自身のためのものです。

銀行に渡せるのは、そのついで、くらいに考えています。

まとめ

今回は、銀行が他行のことを聞く理由と、そのための備えについて書いてきました。

要点を、3つにまとめておきます。

  • 融資の場で聞かれることは決まっていて、その多くが他行の話
  • 隠しても、金利が高い理由のほうは決算書に表れている。渡したほうが、誠実に見える
  • 問いが決まっているのなら、答えのほうを1枚にそろえておける

最初の1歩

手元の返済予定表をぜんぶ集めて、借入先・残高・毎月の返済額・金利・完済時期を、1枚の表にまとめてみましょう。

毎月の返済額の合計が1行で見えるようになるだけでも、次の面談の景色は変わりはじめるとおもいます。

その1枚をどう使って、手元の資金を厚くしていくか。銀行とどう付き合っていくか。そのあたりは、無料メール講座 『銀行融資ラボ』 でも順番にお届けしています。

『銀行融資ラボ』(登録は無料です)

聞かれることは、決まっています。だったら、答えのほうを、そろえておく。よかったら、のぞいてみてください。

この記事を書いた人

1975年生まれ、横浜在住。税理士、発信者、習慣家。2016年に独立以来、きょうまでブログは毎日更新中。近年は、銀行融資支援を得意な仕事にしている。借りれるうちに借りれるだけ借りよ、が口グセ
現在は1日1万歩以上、ひと月150kmほど走る。趣味は、コーヒーとサウナ、読書、散歩、アニメ。スタバでMacがマジカッコいい!と思い続けてる
くわしいプロフィールはこちら

目次